花粉症の患者さんは年々増加傾向で、最近では全人口の約20%にも達しています。特に働き盛りである30代での発症が増加傾向しているだけでなく、年々低年齢化も進んでいます。
現在、花粉症の治療では「第2世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれる薬が中心となっています。従来の第1世代抗ヒスタミン薬で問題となっていた“眠気・だるさ・集中力の低下”といった副作用が大きく改善され、ここ数年で新しい薬も次々と登場しています。
市販薬としてよく知られているフェキソフェナジン(商品名の一つが「アレグラ」)も第2世代抗ヒスタミン薬の一つです。眠気が起こりにくい点が特徴で、この薬だけで症状が軽減する方も多くいらっしゃいます。ただし、医療機関ではこれ以外にも多くの薬の選択肢があり、症状の程度や体質に合わせて、より効果が期待できる薬を組み合わせて処方することが可能です。

鼻水やくしゃみだけでなく、「鼻づまり」が強い方の場合、市販薬だけでは十分な効果が得られないことがあります。その際には、次のような治療の工夫が重要です。
次のような治療の選択肢があります:
鼻粘膜の血管を収縮させる点鼻用血管収縮薬は、即効性があり一時的な鼻づまり改善に役立ちます。しかし、長期間使い続けると「薬剤性鼻炎」と呼ばれる逆効果が起こる可能性があるため、短期間に限定して使用することが大切です。
医療機関では、抗ヒスタミン薬に加えて、炎症を抑える点鼻用ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などを組み合わせることで、強い鼻づまりにも対応できます。特にステロイド点鼻薬は粘膜の腫れを根本から改善し、ロイコトリエン拮抗薬は鼻づまりに関わる炎症反応を抑えることで効果を高めます。
花粉症治療の基本は、「副作用の少ない最小限の治療で最大の効果を得る」ことです。そのためには、市販薬だけに頼らず、症状や体質に応じて薬を適切に使い分ける専門医の知識と経験が重要になります。
薬物療法だけでは十分な効果が得られない、鼻づまりやくしゃみが特に強い方に対しては、新たな治療選択肢として生物学的製剤「ゾレア(オマリズマブ)」が注目されています。
ゾレアは、アレルギー反応の引き金となるIgE抗体に直接結合してその働きを抑えることで、アレルギー反応を源流に遡って抑制します。その結果、鼻水・くしゃみ・鼻づまりといった症状が大幅に軽減し、生活の質(QOL)が大きく改善することが期待できます。
なお、ゾレアはダニアレルギーによる通年性アレルギー性鼻炎には保険適用がなく、薬剤費も比較的高価であるため、使用の際はこうした点にも注意が必要です。
治療は花粉飛散時期の約3か月間、1〜2回/月の皮下注射で行われます。毎年の花粉症で強い症状に悩まされている方や、通常の治療で効果が不十分な方にとって、有力な治療の選択肢となります。使用にあたっては、医師の診察のもとで症状の重さや血液検査(IgE値など)をもとに適応を判断します。
スギ花粉症では、鼻の症状だけでなく、目の充血・かゆみ、皮膚炎、喘息の悪化といった全身的な症状が出ることがあります。そのため、トータルなアレルギー治療が求められます。
スギ花粉が飛び始める約2週間前から始める初期療法(予防的投与)は、症状の発現時期を遅らせたり、ピーク時の症状を軽くする効果があります。中等症以上の方は、症状が出る前から治療を始めるのがおすすめです。
また、2014年からは舌下免疫療法が可能になり、アレルギー体質そのものの改善、すなわち根治を目指す治療が選べるようになりました。
妊娠中でも継続可能で、多くの方がその恩恵を受けています。
花粉症治療は、「市販薬でのセルフケア」から「専門的な併用療法」、さらに「ゾレアによる重症花粉症治療」や「舌下免疫療法による根治」まで、選択肢が大きく広がっています。
症状の強さやライフスタイルに合わせて、最適な治療法を医師と一緒に選び、つらい花粉症シーズンを快適に過ごしましょう。
興味のある方は、お気軽に当クリニックへお問い合わせください。
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