下山記念クリニックの 渡邉 です。
今回は、【高血圧について】お話します。 |
今回のテーマは、「高血圧」です。”血圧”を測ることはとても簡単。針を刺しての採血、複雑な医療機器は不要。
血圧計が一つあれば測定できるため、どんな健康診断でも必ず測定され、各医療機器メーカーから家庭向け血圧計も多数販売されており、ご自身でも測定可能です。
血圧を測定する機会が多い理由
なぜこれほど血圧を測定する機会が多いのか。血圧が高いと、大小の血管や心臓に負担がかかるため、高血圧は脳卒中、狭心症・心筋梗塞などの心疾患、慢性腎臓病などの腎疾患、眼底出血など、命に関わる合併症や生活の質(QOL)を大きく損なう併存症のリスク因子です。
我が国の死因別の死亡率を見ると、1960年代では脳血管障害が最多でしたが、その後低下をたどっています。この一因として、血圧を下げる治療、降圧薬の発展があると言われています。
隠れ高血圧が非常に多い現実
日本で高血圧の方は4300万人と推定されていますが、適切に血圧がコントロールされているのは1200万人とされています。
つまり残りの3100万人は高血圧であるかを知らない、知っていても適切な治療につながっていないという状況です(日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019より引用)。
この数を見ると、治療の恩恵を受けている方の絶対数は少なくはないかもしれませんが、一方で、簡便に検査ができ、多くの方が高血圧の診断・治療に至る可能性があるにもかかわらず、まだまだ高血圧治療の重要度がみなさんには浸透していないのかという印象を受けてしまいます。
なぜこのような状況にあるのでしょうか。
高血圧だけでは隠れた症状に気づきにくい
まずは、高血圧のみでは症状が乏しいからではないかと考えます。
もちろん、短期であっても血圧がすごく高ければ、頭痛、視野障害などをきたすことがありますが、健診で指摘される時点の高血圧は、その時点では症状がなく、何年、何十年をかけて、脳や心臓、腎臓の血管を傷つけ、前述のような合併症へと進展していきます。
健診で高血圧を指摘されても、そのような合併症のイメージを持つのは難しいかもしれません(余談ですが、糖尿病や脂質異常症、肥満症も同じかもしれません)
また、高血圧の方の数が多いことも影響しているかもしれません。周りに高血圧の方も多くいらっしゃり、かつ、ちょっと血圧が高いくらい、と言われて高血圧としての治療を受けていない方も多くいれば、ご自身も血圧が少しくらい高いならいいか、というお気持ちになるかもしれません。
しかし、高血圧に対する降圧治療により、脳血管疾患、認知症、腎臓病の進展が抑制されることは多数の研究で示されています。
ちょっとくらい血圧が高いこと、を見逃すことによって、それより大きな病気を進めてしまうことが避けられるのであれば、医療者としては可能な限り高血圧の治療の場を提供したいと思います。
適切な診療と治療で高血圧のリスクを下げることも
また、高血圧の薬を飲み始めると、ずっと飲まなければならないのか?という質問もよく受けます。
血圧があがる特別原因がない本態性高血圧、と呼ばれる病態が90%を占める一方で、特定のホルモンが関連している二次性高血圧、腎動脈と言われる腎臓へ血液を送る血管が細くなっている腎動脈狭窄症など、その病気を治療すれば高血圧自体が治ってしまう病態もあります。
生活習慣の改善で血圧が下がることも
その他、塩分の摂りすぎ、アルコール摂取が多い、肥満がある方は、それらの改善で血圧が下がることもあり、夜間に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群を治療することで血圧が下がることもあります。
高血圧の原因・病態にもさまざまなものがあるので、医療者にとってはそれを見極め、適切な治療を提供することが腕の見せ所だと思います。
侮ってはいけない高血圧
高血圧という病気を患者さんには侮らないようにしてほしい、また医療者も単に血圧を下げるだけではなく、本当に適切な診断・治療ができているか、高血圧診療に対して侮らずに取り組むべきであることに自戒の念をこめ、今回のブログを締めくくらせていただきます。