本年度から下山記念クリニックに赴任いたしました、渡邉 裕尭 と申します。
これまで糖尿病・内分泌診療に従事してきたこともあり、みなさんの役に立つ情報を発信していければと思います。 |
糖尿病専門医は何を目的に治療しているでしょうか?
古くから、糖尿病は ”血管の障害” を起こす病気と言われています。
糖尿病には併発しやすい三大合併症、
・糖尿病性神経障害
・糖尿病性網膜症
・糖尿病性腎症
があり、これらは糖尿病の細小血管障害とも言われています。
これらの合併症を防ぐために、日本糖尿病学会は、2013年に 熊本宣言2013 として、血糖管理目標はHbA1c 7%未満とする、と発信しています。
さて、それから10年、糖尿病とも関連する肝臓についての宣言が、日本肝臓学会から 奈良宣言2023 としてさています。
これは、肝機能の指標であるALTが30を超える場合、かかりつけ医を受診し、そして必要があれば、消化器内科等の専門診療科で精密検査を受け、かかりつけ医と専門医の診療連携による肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることを目的とする宣言です。
なぜこの宣言に着目したのでしょうか?
奈良宣言2023内にも書かれていますが、ALTが30を超えると、肝臓の組織を細かく見た際、組織内に炎症細胞の浸潤があるとされています。
この状態が続くと、肝硬変や肝臓癌といった重篤な疾患のリスクとなります。
ALT上昇を引き起こす病態の一つに、糖尿病と大きく関連する、脂肪肝があります。実際に、脂肪肝の約6割は、肥満や糖尿病が原因と言われています。
脂肪肝は、新たな糖尿病の合併症とも考えるべきであるという声も上がってはいましたが、精密検査を行うべき数値が学会から具体的に宣言されたことは、糖尿病診療においても、肝疾患の進展を防ぐことに大きく寄与するのではないかと考えます。
よりよい医療を提供するため、医学会も日進月歩。常に新しいデータを取り入れ、皆さんのお役に立てればと思います。
糖尿病治療についてのご相談なら、いつでもお気軽に下山記念クリニックへお越しください。