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下山記念クリニックの 渡邉 です。
今回は、【2型糖尿病の治療選択について】お話します。
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糖尿病では、インスリン分泌の低下、またインスリン感受性の低下(抵抗性)によって慢性的な高血糖状態が引き起こされています。
インスリン分泌の低下・感受性の低下は単独で起こることも、両者が起きていることもあります。
原因も遺伝的な要因から、食事・運動などの生活習慣を含む環境的な要因もあり、「糖尿病」という一つの疾患名で表現されますが、一人一人の病態は異なり、個別な治療戦略が必要です。
病態が複雑であるため、どのような糖尿病薬が各個人に最適であるかは非常に難しい課題かと思われます。
そこで日々進歩している新薬・薬剤の治療効果の研究結果をもとに、日本糖尿病学会が「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を2022年に発表してくれました。
ちなみに2023年10月31日に、「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」(「糖尿病」66(10):715-733, 2023)として、最新の治療薬の知見についても追記された改訂版が発表されています。
全てを説明するのは難しいので、今回はいくつかのポイントに絞って着目したいと思います。
①肥満があるのか?そうでないのか?(Step 1として記載)
肥満があるとインスリン抵抗性(※3)が引き起こされます。
そのため、肥満なのか、非肥満なのかによって、インスリン抵抗性を改善するべきか、インスリン分泌を改善するべきかを考慮して治療薬を選択します。
※3インスリン抵抗性:インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態。
②糖尿病以外に併存する疾患があるか(Step 3として記載)
ここでピックアップされている併存疾患は、慢性腎臓病、心不全、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中等)です。
慢性腎臓病がある方にはSGLT2阻害薬(※1)、GLP-1受容体作動薬(※2)といった種類の薬、心不全がある方にはSGLT2阻害薬、心血管疾患がある方にはSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬といった種類の薬の使用が検討されます。
※1 SGLT2阻害薬:腎臓にある尿細管からのブドウ糖の取り込みを抑え、尿中に糖を排泄しやすくする薬
※2 GLP-1というホルモンに似た作用をもち、血糖値に応じて膵臓からインスリンを分泌させ血糖値を下げる薬
2023年11月 世界糖尿病デーのブル―ライトアップ エールエール広島の光景
大規模研究で併存疾患がある場合、その進行を抑制することが報告されたため、併存疾患がある場合にはこれらの薬剤のの推奨度が上がっています。
日本の糖尿病治療において、このような治療指針が作られたことは画期的なことだと思います。
しかし、このアルゴリズムを踏まえたとしても、各個人がどのような併存疾患があるか、肥満はあるけどインスリン分泌も落ちていないか(反対に非肥満だけどインスリン抵抗性がないか)など、医師の適切な判断も必要かと思います。
みなさんの治療の質を上げられるよう、お力添えができるよう努めてまいります。
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下山記念クリニックの 渡邉 です。
今回は、【2型糖尿病の治療選択について】お話します。
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糖尿病では、インスリン分泌の低下、またインスリン感受性の低下(抵抗性)によって慢性的な高血糖状態が引き起こされています。
インスリン分泌の低下・感受性の低下は単独で起こることも、両者が起きていることもあります。
原因も遺伝的な要因から、食事・運動などの生活習慣を含む環境的な要因もあり、「糖尿病」という一つの疾患名で表現されますが、一人一人の病態は異なり、個別な治療戦略が必要です。
病態が複雑であるため、どのような糖尿病薬が各個人に最適であるかは非常に難しい課題かと思われます。
そこで日々進歩している新薬・薬剤の治療効果の研究結果をもとに、日本糖尿病学会が「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を2022年に発表してくれました。
ちなみに2023年10月31日に、「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」(「糖尿病」66(10):715-733, 2023)として、最新の治療薬の知見についても追記された改訂版が発表されています。
全てを説明するのは難しいので、今回はいくつかのポイントに絞って着目したいと思います。
①肥満があるのか?そうでないのか?(Step 1として記載)
肥満があるとインスリン抵抗性(※3)が引き起こされます。
そのため、肥満なのか、非肥満なのかによって、インスリン抵抗性を改善するべきか、インスリン分泌を改善するべきかを考慮して治療薬を選択します。
※3インスリン抵抗性:インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態。
②糖尿病以外に併存する疾患があるか(Step 3として記載)
ここでピックアップされている併存疾患は、慢性腎臓病、心不全、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中等)です。
慢性腎臓病がある方にはSGLT2阻害薬(※1)、GLP-1受容体作動薬(※2)といった種類の薬、心不全がある方にはSGLT2阻害薬、心血管疾患がある方にはSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬といった種類の薬の使用が検討されます。
※1 SGLT2阻害薬:腎臓にある尿細管からのブドウ糖の取り込みを抑え、尿中に糖を排泄しやすくする薬
※2 GLP-1というホルモンに似た作用をもち、血糖値に応じて膵臓からインスリンを分泌させ血糖値を下げる薬
2023年11月 世界糖尿病デーのブル―ライトアップ エールエール広島の光景
大規模研究で併存疾患がある場合、その進行を抑制することが報告されたため、併存疾患がある場合にはこれらの薬剤のの推奨度が上がっています。
日本の糖尿病治療において、このような治療指針が作られたことは画期的なことだと思います。
しかし、このアルゴリズムを踏まえたとしても、各個人がどのような併存疾患があるか、肥満はあるけどインスリン分泌も落ちていないか(反対に非肥満だけどインスリン抵抗性がないか)など、医師の適切な判断も必要かと思います。
みなさんの治療の質を上げられるよう、お力添えができるよう努めてまいります。